『霧雨』


漆黒の鏡の上を


幾つものヘッドライトが滑ってゆく


こんな寒々とした夜でも


雨は優しく


やわらかく


帽子をつたう


コートをつたう


頬をつたう


そして、語ってゆく


「さみしいんだね


満たされないんだね


でも、そろそろ 君は、気づくよ


君自身の中にも、確かな優しさが在る事を


そして、それが


何よりも、君自身を温めるのだという事を」


空は今夜も誰かの代わりに、涙を流すのだった